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火力発電の種類④ 〜蒸気タービン発電〜

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キーワード:蒸気タービン発電、給水ポンプ、ボイラ、節炭器、蒸発器、過熱器、蒸気タービン、復水器、ランキンサイクル 難易度:★★★☆☆(三種レベル) 蒸気タービン発電とは? 前回 の記事で、 蒸気の性質 について説明したので、今回はその蒸気を利用した 蒸気タービン発電(汽力発電) について説明します。 蒸気タービン発電 は 外燃機関 の一種で、 給水ポンプ 、 ボイラ 、 蒸気タービン 、 復水器 の4つの要素で構成されています。 『給水ポンプ』 で水に 圧力を加え つつ ボイラへ送り 、 『ボイラ』 で 熱を加えて水を過熱蒸気に して、その過熱蒸気で 『蒸気タービン』 を 回転させて発電 するという方式です。 そして蒸気タービンを抜けると過熱蒸気は 湿り蒸気になる ので、これを 『復水器』 に通すことで 再度水に戻し ます。 このようなサイクルを繰り返すことで 継続的に発電 しています。 これが 蒸気タービン発電 の概要です。 各設備での状態変化 それでは 蒸気タービン発電 の 熱サイクル について考えていきましょう。 そのために 給水ポンプ、ボイラ、蒸気タービン、復水器 において 水(蒸気) にはどのような 状態変化 が起こっているのか考えます。 まずは 給水ポンプ です。 給水ポンプ は先ほども説明した通り、 水に圧力を加えつつボイラへ送り込む ための設備です。 その圧力を加える過程は 急速に行われる ので 熱のやり取りをする時間的な余裕はありません。 つまり 断熱圧縮 となります。 続いて ボイラ です。 ボイラ は 圧縮された水を加熱 することで、 湿り蒸気を経て過熱蒸気へと変化 させます。 その間に 圧力は一定 となるよう保たれるので 等圧加熱 となります。 ボイラは実際には、 圧縮水が飽和水に なるまで加熱する 『節炭器』 、 飽和水が乾き飽和蒸気に なるまで

火力発電の種類③ 〜水蒸気の性質〜

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キーワード:蒸気、圧縮液、飽和液、湿り蒸気、乾き飽和蒸気、過熱蒸気 難易度:★★★★☆(二種レベル) よく知られている水の性質 前回 の記事で、 ガスタービン発電 について説明しました。 ということで、次は 汽力発電(蒸気タービン発電) について説明したいのですが、その前段で 少しだけ準備が必要 です。 と言うのも、 蒸気タービン発電 には動作流体としてその名の通り 蒸気 が使われていますが、 蒸気 はいままでのように 『理想気体』 として扱うことができません。 そこで今回は汽力発電の説明に入る前に、 水蒸気の性質 についてお話ししておきましょう。 ご存知のように、水は普通 100℃で沸騰 して 蒸気 になります。 しかしその後、水が 完全に沸騰し終わるまで は、どれだけ熱を加えても 100℃以上の温度にはなりません。 そして水が 全て沸騰し終わる と、ようやく 100℃より高い温度 まで上がるようになります。 これを図に表すと以下のようになり、それぞれの状態を 圧縮液、飽和液、湿り蒸気、乾き飽和蒸気、過熱蒸気 と呼びます。 また、 山の上では水は100℃より低い温度で沸騰 することもよく知られていますが、これは 気圧(空気の圧力) が関係しています。 水が沸騰 するという現象は、 熱エネルギー をもらったその勢いで 周囲の空気の圧力を押しのけて空気中に飛び出す ということです。 したがって山の上は空気が薄いと言われるように 気圧も低い ので、水は 地上よりも簡単に空気中に飛び出せる 、つまり 沸点は低く なります。 逆に 圧力が高い ところだと、水は 押さえつけられてなかなか空気中に飛び出すことができない ため、 沸点は高く なります。 水蒸気のp-V線図とT-s線図 以上の 水蒸気の性質 を

火力発電の種類② 〜ガスタービン発電〜

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キーワード:ガスタービン発電、圧縮機、燃焼器、ガスタービン、ブレイトンサイクル 難易度:★★★☆☆(三種レベル) ガスタービン発電とは? 前回 の記事で、 火力発電 には主に 蒸気タービン発電 と ガスタービン発電 があるという話をしました。 ということで、今回は ガスタービン発電 について説明します。 ガスタービン発電 とは 内燃機関 の一種で、 圧縮機 、 燃焼器 、 ガスタービン の3つの要素で構成されています。 『圧縮機』 を用いて 吸引した空気 を 圧縮して送り出し 、 『燃焼器』 にてその高圧の圧縮空気に 燃料を噴射 して 燃焼 させ、それにより発生する 高温高圧の燃焼ガス で 『ガスタービン』 を 回転させて発電 するという方式です。 圧縮機 と ガスタービン は 回転軸を共有 しているので、燃焼ガスの勢いにより タービンが回転 すると 圧縮機も同時に回転 するため、 空気を吸引し続ける ことができ、 連続的な運転が可能 となります。 圧縮機とは? 圧縮機、燃焼器、ガスタービン という3つの設備が登場しました。 燃焼器 はその名の通り 燃料を燃焼する設備 であり、 ガスタービン は水力発電でいうところの水車のようなもので、 発電機に回転を伝えるための設備 であることは容易に理解できると思いますので、きっとその設備が どんな物かもイメージしやすい でしょう。 しかし恐らく 圧縮機 というのはあまり 馴染みがない と思いますので、ここで少し説明しておきます。 圧縮機 とは先ほども説明したように、 回転することで空気を吸引 して、 高圧に圧縮して送り出す装置 です。 あまりイメージが湧かないと思いますが、実は 身近にも圧縮機は存在 します。 それは 『扇風機』 です! 扇風機 は 回転する ことで羽の 裏側の空気を吸い込んで 、 表側に風を送り出して いますね。

火力発電の種類① 〜いろいろな発電方式〜

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キーワード:外燃機関、汽力発電(蒸気タービン発電)、内燃機関、ガスタービン発電、コンバインドサイクル発電 難易度:★☆☆☆☆(三種レベル) 熱力学のおさらい 前回 までの記事で、 火力発電を論じるのに必要 な 熱力学 の説明が終わりました。 水力発電 の基礎である 流体力学 と比べると、 火力発電 の基礎である 熱力学 はかなり ボリュームがあり難解 だったと思います。 しかし 『火力発電を学ぶのに必要な最小限の熱力学』を凝縮 してありますので、この先つまずいたら ぜひ読み返してみてください。 簡単に 要点 だけおさらいしておきましょう。 火力発電 は 熱エネルギー を用いた発電方法ですが、 動作流体 は 常に流れている ので 流れ仕事 を考慮する必要があります。 したがって動作流体の持っているエネルギーの総量は 内部エネルギー だけでなく 流れ仕事 も含めて考えるのが合理的ということで、 エンタルピー という 概念が導入 されました。 また、 動作流体 は 状態変化 を繰り返しながら 常にぐるぐると回って います。 その 熱サイクル はグラフ上に表すと扱いやすくなるので、 p-V線図 が 導入 されました。 しかし p-V線図 では 熱の出入りが分かりにくい ので、それを分かりやすくするために エントロピー という 物理量を定義 し、 T-s線図 を 導入 しました。 また 気体 の 状態変化 には主に 等温変化、等圧変化、等積変化、断熱変化 があり、それらの組み合わせで 熱サイクル が作れることを学びました。 そして、 等温変化 と 断熱変化 を利用して作る カルノーサイクル という熱サイクルが 理論上最も熱効率が高い ことが 分かりました が、とても 実用的ではない ため、これに 似たT-s線図 となるように 様々な形のサイクル が考えられて 実用に至っています。 今後はその 実用に

火力発電の基礎⑦ 〜カルノーサイクル〜

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キーワード:高温熱源、低温熱源、熱効率、カルノーサイクル、可逆変化、不可逆変化 難易度:★★★☆☆(三種レベル) 熱効率が最大となる熱サイクルとは? 前回 の記事では 『等温変化』『等圧変化』『等積変化』『断熱変化』 という4つの 気体の状態変化 について説明し、それぞれの p-V線図とT-s線図 を示しました。 ここまでくれば、あとはその 状態変化を 組み合わせて様々な熱サイクル を作って、 それを実現するような 熱機関 について考えるだけですね。 何度も言っている ように、熱サイクルを考える上で 最も重要 となるのは 『熱効率』 です。 それでは 熱効率が最も高くなるような熱サイクル はどのようなものなのでしょうか? 以前説明 したように、熱機関において得た熱エネルギーの 一部を捨てないと連続的な仕事は得られない という 『熱力学第二法則』 が存在します。 そのため、 熱サイクル には 受熱過程 と 放熱過程 が必須です。 つまり、動作流体が 熱を受けるための高温熱源 と、 熱を捨てるための低温熱源 の 2つの熱源が必要 になります。 それでは 高温熱源の温度がT1 、 低温熱源の温度がT2 という条件の下で、 最も熱効率の高くなる熱サイクル について考えてみましょう。 まずは 熱効率のおさらい です。 下図のような熱サイクルにおいて、 正味の仕事W(= Q) は 閉じたループの面積 、つまり 赤色の部分 となります。 また 捨てる熱エネルギーQ21 は 閉じたループの下側の面積 、つまり 青色の部分 になります。 そうしたとき、 熱効率は以下の式 で求められます。 要するに (熱効率)=( 赤 )/( 赤 + 青 ) ということです。 この式から Q(赤色の面積)が大きくなればなるほど熱効率は100%に近づく ことが分かりますね。 つまり、 高温熱源 と 低温熱源 の温度がそれぞれ T

火力発電の基礎⑥ 〜4つの状態変化〜

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キーワード:等温変化、等圧変化、等積変化、断熱変化 難易度:★★★★☆(二種レベル) 等温変化とは? それではいよいよ、 理想気体の状態変化 について考えていきましょう。 まずは 『等温変化』 です。 等温変化 とは、 温度Tを一定 にしたまま他の状態( 圧力p、体積V、エントロピーs )を変化させる状態変化のことを言います。 温度が一定 なので ボイルの法則 が成り立ち、 圧力pと体積Vは反比例 の関係にあるので、 p-V線図は反比例のグラフ になります。 一方、T-s線図は エントロピーsが変動しても常に温度Tが一定 なので、 横軸に平行のグラフ になります。 等圧変化とは? 次に 『等圧変化』 です。 等圧変化 とは、 圧力pを一定 にしたまま他の状態( 体積V、温度T、エントロピーs )を変化させる状態変化のことを言います。 圧力が一定 なので、 p-V線図は横軸に平行のグラフ になります。 T-s線図 については、 前回 導いた 温度とエントロピーの式