電力系統について③ 〜変圧器のしくみ〜
キーワード:アンペールの法則、ファラデーの法則、直流、交流、変圧器の原理、交流使用の理由
アンペールの法則とファラデーの法則
ここでこれまでに出てきた法則を思い出してみましょう。
まずはアンペールの法則ですが、電流の周りに磁界が発生するという法則でしたので、電気から磁気に変換していると言えますね。
次にファラデーの法則ですが、磁束の時間変化に応じた誘導起電力が発生するという法則でしたので、磁気から電気に変換していると言えます。
ということは、アンペールの法則とファラデーの法則を組み合わせれば、電気⇒磁気⇒電気となり、一度磁気に変換するというワンクッションを置くことで、ある電気から別の電気への変換が実現できそうです。
直流と交流
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変圧器のしくみ
ここで、以下のような図を考えてみましょう。
この図で左側から交流の電圧をかけると、一次側(左側)のコイルには交流の電流が発生します。
そうすると一次側のコイルはアンペールの法則により磁束を発生させます。
鉄は空気と比較してかなり磁界を通しやすいという性質があるため、発生した磁束はほとんどすべてが鉄心の中を通ります。
この磁束が二次側のコイルのループを貫くことでファラデーの法則により誘導起電力が発生し、二次側の端子にも電圧がかかります。
これが変圧器の大雑把なしくみです。
電圧の大きさを調整する
磁束がループを貫くことによって誘導起電力が発生しますが、このループの巻数が2巻、3巻と増えると、ループ1巻ごとに同じ大きさの誘導起電力が発生するため、端子間には2倍、3倍という電圧が発生します。
鉄心を通る磁束をΦとすると、その時間変化はdΦ/dtで表すことができ、これがすなわち1巻のループに発生する誘導起電力の大きさになります。
ちなみに、磁束は一次側のループも貫いているため、一次側にも誘導起電力が発生していて、これが電源の電圧に等しいと考えることができます。
すると、一次側の巻数がN1、二次側の巻数がN2の場合、一次側と二次側のコイルに発生する誘導起電力V1、V2はそれぞれ、
V1 = N1 × dΦ/dt
V2 = N2 × dΦ/dt
となります。
この2つの式を変形すると、V1/V2 = N1/N2という関係が導かれます。
つまり、一次側の電圧と二次側の電圧の比は、一次側の巻数と二次側の巻数の比に等しくなるということです。
具体的には、例えば一次側の巻数N1が2巻で、二次側の巻数N2が5巻の変圧器がある場合、一次側にV1 = 10(V)の電圧をかける場合の二次側の電圧V2を求めます。
先ほどの式に各値を代入すれば、
V1/V2 = N1/N2
∴V2 = V1×N2/N1 = 10×5÷2 = 25(V)
となるため、一次側で10Vだった電圧は二次側で25Vまで上昇します。
その上昇の割合が巻数N1とN2の比率で決まるということです。
したがって、発電所での昇圧用変圧器はN1 < N2とし、逆に各変電所や柱上変圧器などの降圧用変圧器はN1 > N2とすればよいのです。
交流が使われている理由
以上のように、変圧器の構造は非常に簡単で、鉄心とそこにぐるぐる巻きにしたコイルが2つあればよく、しかも電圧の大きさは巻数を変えることで簡単に調整できます。
こんな簡単な構造で電圧の上げ下げができるのは、先ほど説明した通り、使っている電気が交流で時間変化するからです。
また、詳細は後日説明しますが、発電機にしてもモーターにしても交流の方が扱いやすいということもあり、さらに系統内に事故が発生した場合に交流の方が電気を遮断しやすいということもあるため、現在の日本の電力系統はほとんどが交流で運用されています。
まとめ
①直流と交流:
直流 ⇒ 大きさが一定の電圧・電流
交流 ⇒ 大きさが変動する電圧・電流
②変圧器の構造:
鉄心+2つのコイル
③変圧器のしくみ:
一次側に交流電圧印加
⇒ 磁束発生
⇒ 磁束が二次側コイルに鎖交
⇒ 二次側に誘導起電力発生
④二次側電圧:
巻数比で決定(V2 = V1×N2/N1)
⑤交流の採用理由:
変圧器で容易に電圧の大きさを調整可能
発電機・モーターなどが扱いやすい
事故電流が遮断しやすい
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