火力発電の種類② 〜ガスタービン発電〜
キーワード:ガスタービン発電、圧縮機、燃焼器、ガスタービン、ブレイトンサイクル
難易度:★★★☆☆(三種レベル)
ガスタービン発電とは?
前回の記事で、火力発電には主に蒸気タービン発電とガスタービン発電があるという話をしました。
ということで、今回はガスタービン発電について説明します。
ガスタービン発電とは内燃機関の一種で、圧縮機、燃焼器、ガスタービンの3つの要素で構成されています。
『圧縮機』を用いて吸引した空気を圧縮して送り出し、『燃焼器』にてその高圧の圧縮空気に燃料を噴射して燃焼させ、それにより発生する高温高圧の燃焼ガスで『ガスタービン』を回転させて発電するという方式です。
圧縮機とガスタービンは回転軸を共有しているので、燃焼ガスの勢いによりタービンが回転すると圧縮機も同時に回転するため、空気を吸引し続けることができ、連続的な運転が可能となります。
圧縮機とは?
圧縮機、燃焼器、ガスタービンという3つの設備が登場しました。
燃焼器はその名の通り燃料を燃焼する設備であり、ガスタービンは水力発電でいうところの水車のようなもので、発電機に回転を伝えるための設備であることは容易に理解できると思いますので、きっとその設備がどんな物かもイメージしやすいでしょう。
しかし恐らく圧縮機というのはあまり馴染みがないと思いますので、ここで少し説明しておきます。
圧縮機とは先ほども説明したように、回転することで空気を吸引して、高圧に圧縮して送り出す装置です。
あまりイメージが湧かないと思いますが、実は身近にも圧縮機は存在します。
それは『扇風機』です!
扇風機は回転することで羽の裏側の空気を吸い込んで、表側に風を送り出していますね。
『風を感じる』ということは、空気が部分的に大気圧以上の圧力を持った状態にあるということです。
つまり扇風機とは、全く風のない大気圧の下に置いて回すことで、その前面から圧縮された空気を送り出す『圧縮機』なのです!
(ちなみに厳密には、100kPa以上の高圧に圧縮するものを『圧縮機』と呼び、それ未満のものは『送風機』と呼ぶようなので、扇風機は送風機にあたります。)
燃焼器の必要性
圧縮機が高圧の空気を送り出すのであれば、その高圧の空気をそのままタービンに噴射させて回転させれば良いのではないかと思うかも知れません。
しかし考えてみれば、これが成り立つとすると永久機関が完成してしまいます。
実際には、圧縮機を駆動するための回転力というのは、圧縮機によって圧縮された空気を使ってタービンを回すときに生じる回転力よりも当然ですが大きいのです。
だから高圧の空気を燃焼器で燃焼させることにより、そこにさらに熱エネルギーを加えてあげることによって、圧縮機を駆動するための回転力を超える大きな回転力をタービンで得られるようになるということです。
ブレイトンサイクルとは?
それではいよいよガスタービン発電の熱サイクルについて考えてみましょう。
まず最初に圧縮機によって空気は急激に圧縮されます(状態1→2)。
外部と熱エネルギーのやり取りをする時間的余裕を与えないくらい高速で圧縮するため、これは断熱圧縮となります。
次に圧縮して高圧となった空気を、燃焼器の中で圧力はそのままにして加熱するため、これは等圧加熱となります(状態2→3)。
その後、高温高圧の燃焼ガスは膨張しながらガスタービンを勢いよく回転させるような仕事をします(状態3→4)。
これも熱のやり取りをする隙を与えずに行われる状態変化なので、断熱膨張となります。
そして仕事を終えた燃焼ガスは大気中に排気されます(状態4→1)。
それと同時に新たに圧縮機が空気を吸引するので、等価的に等圧冷却として表すことができます。
これらの状態変化をつなぎ合わせると以下のような熱サイクルとなります。
このガスタービン発電における熱サイクルのことを『ブレイトンサイクル』と呼びます。
ブレイトンサイクルの熱効率
ガスタービン発電における熱サイクルがブレイトンサイクルとなることが分かりました。
それではその熱効率はどのようになるのでしょうか?
熱効率は以前説明したように、T-s線図上の面積で求めることができます。
上の図のように正味の仕事がW = Q1であり、放熱エネルギーがQ2であるとすれば、熱効率ηは、
と表されます。
熱効率を高めたいならば、正味の仕事Q1を大きく、放熱エネルギーQ2を小さくすれば良いことが分かるでしょう。
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