【三種過去問】水力発電
これまでのまとめ(水力発電)
これまで水力発電に関する記事を5回に渡って書いてきましたが、なんとここまでの知識だけで最近7年間の電験三種の水力発電の問題は解けてしまうのです!
まずはここまでの知識をまとめておきましょう。
水力発電のスタートは何と言ってもベルヌーイの定理です。
そのベルヌーイの定理の導出から始まり、次にそれを実際の水力発電に適用することで発電機出力の式を導きました。
その後、発電機を回すための水車について、利用するエネルギーによって衝動水車と反動水車に大別できることを説明しました。
また、それぞれの水車について出力を増減させるための流量の調整方法についても説明しました。
このくらいの水力発電のエッセンスが分かっているだけで、三種の問題ならば十分解けてしまうのです。
それでは過去問を確認していきましょう。
平成21年〜27年の三種過去問
【平成21年】
定格出力というのは、定格負荷を接続した場合の出力になります。
今回は80%負荷で運転とのことなので、定格負荷の80%、つまり2500×0.8 = 2000 [kW]の電力を出力していることになります。
あとは発電機出力の式
に各値(Pg = 2000、H = 100、ηw = 0.92、ηg = 0.94)を代入すれば流量は求まります。
Q = 2000 / (9.8×100×0.92×0.94) = 2.36
答:(2)
【平成22年】
衝動水車に関する出題で、水車の種類に関する記事を理解していれば解けます。
衝動水車はノズルによって水のエネルギーを全て運動エネルギーに変えて回す水車ですので、(ア)は『速度水頭』、(イ)は『圧力水頭』と分かります。
(ウ)は衝動水車の代表的なものを選ぶので『ペルトン水車』、(エ)はノズルによって水が空気中に放出されるので『空気中』となります。
答:(5)
【平成24年】
落差についてはこちらの記事で書いていますので、これを覚えていれば簡単に解けます。
(ア)は『総落差』、(イ)は『損失水頭』、(ウ)は『有効落差』でしたね。
これだけで答えは(3)と分かってしまうのですが、念のため(エ)と(オ)についても考えておきましょう。
水車出力と発電機出力の式を選ぶ問題ですが、こちらの記事を読めばすぐに(エ)が『9.8QHηw×10^3 [W]』、(オ)が『9.8QHηwηg×10^3 [W]』と分かります。
記事では単位がkWとなっている点に注意しましょう。
答:(3)
【平成25年】
平成22年の問題同様、水車の種類に関する問題ですので、こちらの記事を読めば分かります。
運動エネルギーを使うのは衝動水車で代表的なものはペルトン水車なので、(ア)は『衝動』、(イ)は『ペルトン』です。
これだけで答えは(4)と分かってしまいます。
ちなみに反動水車の代表的なものがフランシス水車であることは説明しましたが、プロペラ水車やクロスフロー水車についてはまだ説明していませんので今後にご期待ください。
答:(4)
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【平成26年・その1】
調速機についてはまだ説明していませんが、発電機には需要に応じて出力を調整する必要があることや、事故時には負荷が急に軽くなるので回転速度が異常上昇することはこちらの記事で説明しました。
したがって(ア)は『出力』、(イ)は『上昇』と分かります。
また、出力調整のためには流量を調整する必要があり、それはペルトン水車だとニードル弁の出し入れ、フランシス水車だとガイドベーンの開度で行うことをこちらの記事で説明しました。
したがって(ウ)は『ニードル弁』、(エ)は『ガイドベーン』と分かります。
答:(1)
【平成26年・その2】
流量はこちらで説明した連続の式Q = Av から求めることができます。
Aは断面積なので、内径Dが1.2mの円の面積は、A = πD^2 / 4 = 1.131となります。
したがってQ = Av = 1.131×5.3 = 6.00となります。
また、与えられた式は高さの単位で表されていますが、これをエネルギーの単位に直すにはρQgをかければよいということは以前説明しました。
したがって、P = ρQgh +pQ + ρQv^2 / 2に各値を代入すれば、P = 18084 [kW]となります。
これは水車に入る直前のエネルギーなので、水車出力はこの値に水車効率ηwをかけたものになります。
したがって18084×0.885 = 16004 [kW]なので、答えは16000kWとなります。
(a)の答:(4)
(b)の答:(4)
【平成27年】
これは水力発電の問題というよりは物理学の単位の問題なので、これまで特に解説はしていませんが、文章の流れ通りに考えれば解けます。
単位が苦手な方のために単位の話も今後書く予定ではいますが、他にも分かりやすいサイトが多数あるのでそちらを参照してください。
答:(5)
三種過去問のまとめ
三種の水力発電の問題は毎年1〜2問出題されています。
そして頻出項目は、発電機出力を求める計算問題や、水車の種類に関する文章問題です。
今後、さらに詳しく水力発電について解説していきますが、ここまでの記事が超基本事項であり、それに基づいた論理展開がなされていくので、必ず身につけるようにしてください。
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