水力発電の設備① 〜水車の種類〜

キーワード:衝動水車、ノズル、バケット、ランナ、ニードル弁、デフレクタ、反動水車、ガイドベーン、吸出し管
難易度:★★☆☆☆(三種レベル)


水車の種類

以前説明したように、上池の水面が持つ位置エネルギーは、水車の手前に到達するまでの間に運動エネルギーと圧力エネルギーに変換されます。
そしてその運動エネルギーと圧力エネルギーを利用して、水車を回転させて発電しています。

それでは、運動エネルギーと圧力エネルギーの配分はどのようになっているのでしょうか?
それは実は水車の種類によって異なるのです。

水車には衝動水車反動水車2種類が存在します。

衝動水車は水の持つ運動エネルギーを利用して回す水車であり、反動水車は水の持つ圧力エネルギーを主に利用して回す水車です。

そのため、衝動水車には、直前まで持っていた圧力エネルギーを全て運動エネルギーに変換するための仕組みが備わっています。
一方、反動水車には、水車出口での圧力エネルギーをできる限り小さくするための仕組みが備わっています。


ここで以前説明した発電機出力について考えてみましょう。
発電機出力の式は以下の通りで、流量・有効落差・水車効率・発電機効率に比例します。


(Pg:発電機出力 [kW]、Q:流量 [m^3/s]、H:有効落差 [m]、ηw:水車効率、ηg:発電機効率)

水車効率発電機効率は、その名の通り 効率(損失の少なさ)を表しているので、水車や発電機はできるだけ効率が高くなるように設計されます。
上で述べた衝動水車における運動エネルギーを圧力エネルギーに変換する仕組みや、反動水車における水車出口の圧力エネルギーを極力小さくする仕組みは、まさにその水車効率を上げるためのものなのです。
発電機効率を上げる方法は『機械』科目の範囲なので、ここでは省略します。)

また、負荷の変動に合わせて発電機出力も増減できなくてはなりません。
(その理由は以前説明しました。)

有効落差発電所を建設すると同時に決まってくる値なので、基本的に調節できません。
したがって発電機出力を増減するためには流量を調節してやる必要があるので、水車には流量を調節する仕組みが備わっていなければなりません。

以下、衝動水車反動水車について、上に述べた3つの仕組みを主軸としてそれぞれ解説していきます。


衝動水車とは?
衝動水車は水の持つ運動エネルギーを利用して回転する水車です。

代表的なものにペルトン水車があるので、ここではペルトン水車を例にとって説明します。


水圧管を流れてきた流水は、水車の手前にあるノズルによって空気中へと自由に放出され、バケットにぶつかってランナを回転させます。


コラム①で説明した通り、水圧管のように密閉された空間に詰められている水は圧力エネルギーを持っていますが、ノズルを経由して空気中へと自由に放出された瞬間にその圧力エネルギーは全て運動エネルギーへと変換されます。
したがってこのノズルこそが圧力エネルギーを運動エネルギーに変換する仕組みになります。



蛇口にホースを取り付けて、ホースの先端を指ですぼめる水の勢いが強くなるのを経験したことがある方は多いと思いますが、ノズルはまさにその原理を利用しています。

そのためノズルの先端水圧管の断面積よりも小さくなっています。


流量の調節については、ニードル弁を使って行われます。


ニードル弁を出していくと流水が通過する断面積が小さくなるため、流量が少なくなります。


これは水道の蛇口を閉めるのと同じ原理です。

しかし、流量の調節機構がニードル弁だけだと、系統事故などに対応できません。
なぜならば、負荷遮断時ニードル弁を急に全閉してしまうと、水の逃げ場がなくなって水圧管内の圧力が高まってしまい、最悪の場合、水圧管が破裂する恐れがあるからです。
(これを水撃作用と呼び、詳細は今後説明します。)

そこで、流量を急変させる場合は、まずデフレクタによってノズルから射出された水をバケットに当たらないように逸らしてから、ニードル弁をゆっくりと閉じていくという方法がとられています。


反動水車とは?
反動水車は水の持つ圧力エネルギーを利用して回転する水車です。

代表的なものにフランシス水車があるので、ここではフランシス水車を例にとって説明します。


密閉空間に詰められている水は圧力エネルギーを持つので、反動水車は衝動水車とは異なり、密閉空間の中に設置されます。


水圧管を流れてきた流水は、案内羽根(ガイドベーン)に導かれてランナを回転させます。


ジェット機は進行方向と逆向きにガスを噴射してその反動を推進力として進みますが、反動水車もそれと同じ原理を利用しています。
つまりガイドベーンからランナへと流水が移る際に大きく方向が逸れるため、その反動でランナが回転しているのです。

このガイドベーン開き具合を変えることによって流量を調節する機能を持っています。
これも当然、蛇口の開閉と同じ原理です。



水車から出てきた流水をそのまま空気中に放出させると、流水には圧力エネルギーと運動エネルギーが少し残ってしまいます。
反動水車圧力エネルギーを利用して回転しているため、水車出口の圧力エネルギーが大きければ大きいほど、水車を回す際に使い切れず余らせてしまったということになり、水車効率が悪くなります。
したがってどうにか水車出口の圧力エネルギーを小さくしたいのですが、そのために設置されるのが吸出し管です。
吸出し管水車出口と放水面とを接続する管のことで、これによって水車出口の圧力を大気圧より小さくすることが可能になります。
(詳細な原理は次回解説します。)



まとめ
【衝動水車(ペルトン水車)】
水の運動エネルギーを利用

①ノズル:
圧力エネルギーを運動エネルギーに変換

②ニードル弁:
水の流量を調節

③デフレクタ:
噴射された水がバケットに当たらないように逸らす

【反動水車(フランシス水車)】
水の圧力エネルギーを主に利用

①ガイドベーン:
水の流量を調節

②吸出し管:
水車出口の圧力を大気圧以下に下げる

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