電力技術の概要のまとめ
これまでの流れのまとめ
その後、電力系統について学びました。
電力系統とは、発電所・送配電ネットワーク・需要家という、一連の電力システムのことです。
また、電気が送配電ネットワークを通過する際に発生する電力損失を極力軽減するために発電所で電圧を高めていることや、逆に設備をコンパクトにしたり電気を扱いやすくするために 需要家の手前で電圧を低くしていることも説明しました。
そして、その電圧の上げ下げは変圧器で行われていることを学びました。
変圧器の動作原理は、電動機と発電機のそれぞれの動作原理であるアンペールの法則とファラデーの法則を組み合わせたものです。
ファラデーの法則は時間変化する磁気から電気を発生させる法則なので、変圧器は交流専用の電圧変換装置ということになります。
最後に電力系統に必要な条件について学びました。
1つ目は周波数について。
電力の需要に対して供給量が多いと周波数は上昇し、逆に供給量が少ないと周波数は低下します。
周波数が変動すると発電機にも需要家にも悪影響を与えるので、極力変動しないように制御されています。
2つ目は電圧について。
これも周波数と同様、需要量によって変動します。
需要が多いと電流がたくさん流れて電圧は低下し、需要が少ないとフェランチ効果という現象が起こって電圧が上昇します。
電圧が変動するとロスが増えたり機器の寿命が縮んだりするため、これも極力変動しないように制御されています。
3つ目は安定度について。
交流の電力には実際に消費される有効電力と回路内を行ったり来たりするだけの無効電力があります。
有効電力のバランスが崩れると発電機群はシンクロを保てなくなり脱調してしまうことがありますが、脱調せずに同期運転を保てるかどうかの度合いを同期安定度といいます。
また、無効電力のバランスが崩れると電圧が雪崩的に低下していってしまう電圧崩壊という現象が起こることがありますが、電圧崩壊を起こさずに送電を続けられるかどうかの度合いを電圧安定性といいます。
4つ目は事故対策について。
短絡事故や地絡事故、断線事故が発生したときに、それを放置すると大規模な設備被害が発生してしまいます。
それを防ぐために、保護リレーで事故が発生していることを検知して、遮断器で事故発生箇所を回路から切り離しています。
今後の展望
これまで説明してきた内容は、電力技術の根幹となる内容です。
今後、電験でいう『理論』や『電力』、『機械』の科目の解説を進めていく際の根っこの部分になるので、困ったら必ずこの記事に戻ってくるようにしてください。
電験では非常に幅広くて深い知識が必要となります。
たまに深いところまで入り過ぎて、「あれ、そもそもなんで今こんなことを考えているんだっけ?」と疑問に思うことがあると思います。
しかしその答えの大半はこの記事に書いてあります。
例えば水力発電や火力発電の分野で出力調整方法の勉強をすることになりますが、「なんで出力調整について考えているんだっけ?」と疑問に思ったとします。
その答えはまさにこの記事に書かれている通り、『有効電力をバランスさせることで発電機を脱調させない』ためであり、『需給バランスを保つことで周波数を変動させない』ためなのです。
今後も分かりやすい解説を心がけていきますが、長ったらしい文章にしたくはないので、困ったら必ずここに戻ってくることを心に留めておいていただけると幸いです。
まとめ
①電動機・発電機:
電動機(原理:アンペールの法則):
電圧かける ⇒ 回転発生
発電機(原理:ファラデーの法則):
回転させる ⇒ 電圧発生
②アンペールの法則・ファラデーの法則:
アンペールの法則:
電気 ⇒ 磁気
ファラデーの法則:
磁気(時間変化) ⇒ 電気
③変圧器:
原理 ⇒ アンペールの法則&ファラデーの法則
電圧上げ下げ可能
発電所 ⇒ 電圧高くする
需要家手前 ⇒ 電圧低くする
④電力系統に必要な条件:
周波数変動:
変動が少ない方が良い
電圧変動:
変動が少ない方が良い
安定度:
同期安定度・電圧安定性
事故対策:
保護リレー・遮断器
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