火力発電の種類③ 〜水蒸気の性質〜
キーワード:蒸気、圧縮液、飽和液、湿り蒸気、乾き飽和蒸気、過熱蒸気
難易度:★★★★☆(二種レベル)
よく知られている水の性質
ご存知のように、水は普通100℃で沸騰して蒸気になります。
しかしその後、水が完全に沸騰し終わるまでは、どれだけ熱を加えても100℃以上の温度にはなりません。
そして水が全て沸騰し終わると、ようやく100℃より高い温度まで上がるようになります。
これを図に表すと以下のようになり、それぞれの状態を圧縮液、飽和液、湿り蒸気、乾き飽和蒸気、過熱蒸気と呼びます。
また、山の上では水は100℃より低い温度で沸騰することもよく知られていますが、これは気圧(空気の圧力)が関係しています。
水が沸騰するという現象は、熱エネルギーをもらったその勢いで周囲の空気の圧力を押しのけて空気中に飛び出すということです。
したがって山の上は空気が薄いと言われるように気圧も低いので、水は地上よりも簡単に空気中に飛び出せる、つまり沸点は低くなります。
逆に圧力が高いところだと、水は押さえつけられてなかなか空気中に飛び出すことができないため、沸点は高くなります。
水蒸気の状態変化
それではこれら蒸気のp-V線図、T-s線図上に状態変化の線を描き込むとどのようになるのでしょうか。
まずは等圧変化です。
圧力が一定の変化なので、当然p-V線図は横軸に平行となります。
一方、T-s線図の場合、エントロピーが増えることは加熱し続けることと同義なので、上で述べた蒸気の性質をそのまま表すような形となります。
つまり沸点までは温度が上がり続け、沸点に達すると湿り蒸気になるが温度は一定で、飽和蒸気となってもまだ加熱を続けると過熱蒸気となって温度が再び上昇していくと言った形です。
続いて等積変化です。
体積が一定の変化なので、当然p-V線図は縦軸に平行となります。
一方、T-s線図の場合、水と蒸気が混合している湿り蒸気の状態を考える と、体積が一定なので水が蒸気になればなるほどその蒸気の圧力は高くなるため、水は大気に飛び出しにくくなる、つまり沸点が高くなります。
したがって等積変化で水を加熱していくと、蒸気量が増えるに連れて温度も上昇していくような形となります。
さらに、飽和蒸気になってもまだ加熱を続けると、等圧変化と同様に過熱蒸気となりますが、体積が一定で外部に仕事ができない分、その熱エネルギーは全て温度上昇に使われるため、等圧変化のときよりも急激に温度が上昇します。
このことは熱力学第一法則から容易に理解できますね。
次に等温変化です。
温度が一定の変化なので、当然T-s線図は横軸に平行となります。
一方、p-V線図の場合、かかっている圧力を徐々に下げていったときの体積の変化を表します。
圧縮液の場合は圧力を変化させても体積はほとんど変わらないため、圧縮液領域ではほとんど垂直に近い形となります。
湿り蒸気域では、最初に説明したように、飽和液から湿り蒸気、乾き飽和蒸気と変化する間に圧力と温度は一定で体積だけが増えるので、横軸に平行となります。
過熱蒸気となった後は、外部の圧力が下がればその圧力に釣り合うまで蒸気は外部に仕事をする、つまり膨張して体積が増えるので、右下がりの形になります。
最後に断熱変化(等エントロピー変化)です。
エントロピーが一定の変化なので、当然T-s線図は縦軸に平行となります。
一方、p-V線図の場合、先ほども述べたように圧縮液領域では圧力を変化させても体積はほとんど変わらないため垂直に近い形となります。
また、湿り蒸気域や過熱蒸気域では、細かい理屈は割愛しますが理想気体のときと同様の形となります。
以上が蒸気における状態変化のp-V線図とT-s線図でした。
これらを用いて、いよいよ火力発電のメインとも言える蒸気タービン発電(汽力発電)におけるランキンサイクルについて説明していきます。
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