火力発電の基礎③ 〜熱サイクルとp-V線図〜
キーワード:熱機関、熱サイクル、熱力学第二法則、p-V線図、正味の仕事
難易度:★★★☆☆(三種レベル)
熱機関・熱サイクル
前回説明したように、空気が外へ仕事をするということは、その空気が膨張する勢いを利用してピストンなどを動かすということでした。
よく知られているように、空気は加熱することで膨張し、冷却することで収縮します。
それでは、火力発電などのように発電機を回すという仕事を長時間続けるためには、熱を加え続けるだけで良いのでしょうか?
もしも無限に長いシリンダーが存在するならば、その中に閉じ込めてある空気をずっと加熱し続ければ、空気は膨張し続けるため外部に仕事をし続けますので、半永久的な仕事を得ることが可能です。
しかし実際には無限に長いシリンダーなど存在しないので、空気を加熱することで膨張させて外部に仕事をし、今度は逆に空気を冷却することで収縮させて元の状態に戻す、そしてまた加熱して・・・という繰り返しの動作が必要になります。
このように熱エネルギーを利用して連続的な仕事を得る機構のことを『熱機関』といい、熱機関における動作流体(空気など)の状態変化の繰り返しのことを『熱サイクル』と呼びます。
熱力学第二法則とは?
仕事を具体的に考える
今まで仕事をWと表現してきましたが、もうちょっと具体的に考えてみましょう。
仕事とは、空気の膨張によってピストンを動かしたりタービンを回したりすることであるということをこれまでに説明してきました。
ピストンの場合を考えると、下図のように空気の膨張によってピストンがxの位置からほんの少し、つまりΔxだけ動いたとします。
空気の圧力をp、ピストンの面積をSとすれば、このときに空気が外部にした微小な仕事ΔWは、
と表されます。
ここで、SΔxというのは、下図の斜線部分の体積、つまり空気が膨張した分の体積になります。
したがって微小な仕事ΔWは、
と表され、空気の圧力pと体積Vに関連することが分かります。
p-V線図とは?
熱サイクルにおいて、気体は絶えず状態変化を繰り返していることは先ほど述べました。
それではその状態変化の様子を一目で見てわかるような工夫はできないのでしょうか?
気体には、圧力や体積、温度などの状態が存在します。
このうちどれか2つをとって縦軸と横軸にしたグラフを描けば、状態変化の様子が一目で分かりそうですね!
ここで先ほどの仕事について思い出してみると、仕事は圧力と体積から求められるということでした。
ということは圧力pと体積Vのグラフを描けば都合が良さそうですね。
このようなグラフをp-V線図と呼びます。
p-V線図の読み方
熱サイクルをp-V線図で表すことによってどのような利点が生まれるのでしょうか?
気体がある状態1から別の状態2まで状態変化したときのp-V線図は以下のようになります。
状態1のときの体積からΔVだけ増えたときの仕事は、先ほど述べたようにΔW = pΔVで表されます。
これをグラフで表すと以下のようになりますね。
したがって状態1から2まで変化する間に気体がするトータルの仕事Wは、下図の斜線部分の面積に等しくなります。
数学的には圧力pを体積Vで積分するということになります。
それでは熱サイクルについて考えましょう。
熱サイクルは、気体が何回かの状態変化を経て最初の状態に戻り、それをずっと繰り返すことを言います。
したがってp-V線図上では下図のように閉じたループとなります。
状態1から2までは先ほどと同じ状態変化をしており、この経路を経路aとします。
そして状態2から今度は経路bを辿って状態変化し、元の状態1に戻ってくるというサイクルだとします。
この場合、状態1から2までは気体が膨張しているため外部に仕事をしますが、逆に状態2から1に戻るときは気体が収縮しているため外部から仕事をされていることになります。
前者の仕事をW12とし後者の仕事をW21とすれば、この熱サイクルで外部にした正味の仕事WはW = W12 - W21ということになります。
これをp-V線図上で表すと下図のようになります。
つまり、ある熱サイクルにおける正味の仕事は、その熱サイクルをp-V線図で表したときに出来る閉じたループの面積の大きさに他ならないのです!
これで実質どの程度の仕事をしているのかというのが、一目見て 分かるようになりますね。
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