火力発電の基礎① 〜熱力学第一法則〜
キーワード:閉じた系、熱運動、内部エネルギー、熱エネルギー、圧縮性流体、仕事、熱力学第一法則
難易度:★★☆☆☆(三種レベル)
火力発電とは?
水力発電は、水を高い位置に持っていくことで位置エネルギーを持たせ、それを運ばせて水車を回すという仕組みでした。
一方、火力発電の場合も同様に水にエネルギーを運んでもらうのですが、何のエネルギーを運ぶかというと『熱エネルギー』です。
水(水蒸気)に熱などを加えて熱エネルギーを持たせ、それを運ばせてタービンを回すというのが火力発電の仕組みなのです。
気体の持つエネルギー
それでは次に、下図のような状況を考えます。
シリンダーとピストンで構成された容器の中には気体が入っており、シリンダーとピストンの隙間から気体が漏れ出たり流れ込んだりはしないと仮定します。
このように物質の出入りができない系を閉じた系と呼びます。
このシリンダー内の気体が持つエネルギーはどのようなものが考えられるでしょうか?
マクロな視点で見ると、シリンダー内の気体の塊は動いていないので運動エネルギーはゼロであり、また気体が存在する位置の高さを基準とすれば位置エネルギーもゼロです。
つまり、力学的エネルギー(=運動エネルギー+位置エネルギー)はゼロということになります。
それでは気体の持つエネルギーはゼロかと言うと、そうではありません。
実は気体をミクロな視点で見ると、非常にたくさんの分子が飛び交っています。
そしてその分子一つひとつが直進や回転、振動などの運動をしています。
この分子の運動が激しければ激しいほど気体の温度が高くなるため、この運動のことを熱運動と呼びます。
そして熱運動によるエネルギーのことを気体の内部エネルギーと呼びます。
気体にエネルギーを与える方法
それでは気体の熱運動を活発にさせる方法、つまり内部エネルギーを増加させる方法にはどのようなものがあるでしょうか?
まず一番分かりやすい方法として、外部から加熱してあげる方法が考えられます。
さらに他の方法も考えられます。
水力発電では水という非圧縮性流体を考えていましたが、気体は下図のように外からピストンに力を加えることによって圧縮することができますね。
つまり気体は圧縮性流体ということになります。
このように外部から力を加え気体を圧縮する際に要したエネルギーを『気体にした仕事』と呼びます。
しかし気体の立場で考えると、外部から仕事を『されている』ことになりますね。
これを『気体が外部からされた仕事』と呼び、気体にエネルギーを加える手段の1つとなります。
なぜ外部からされた仕事が気体にエネルギーとして蓄えられるのか、腑に落ちない方もいると思いますが、これはイメージ的にはバネで考えると納得できると思います。
圧縮性流体はその名の通り、ピストンを押したり引いたりすることで圧縮したり膨張したりできる流体のことです。
これは下図のようにバネを押したり引いたりすることでバネが伸び縮みすることに似ていますね。
バネを手で押して縮めているとき、その手にはバネが元の位置に戻ろうとする力を感じますよね。
そして手を離したら元の位置に勝手に戻りますよね。
したがってバネを縮めるような力を外部から加える、つまり外部から仕事をすると、バネには元の位置に戻ろうとするエネルギーが蓄えられ、外部からの力を緩めると、蓄えられたエネルギーを使って元の位置に戻ることは感覚的に理解できると思います。
気体の場合もそれと同じということです。
熱力学第一法則とは?
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